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歯の痛みの原因と治療法

2021年12月28日

歯の痛みには、「歯がしみる」「ズキズキ痛む」など様々な種類があります。
その原因として挙げられるのは、象牙質知覚過敏、楔状欠損(WSD)、虫歯、根尖性歯周組織炎があります。その原因について詳しくお話しします。

 

原因➀:象牙質知覚過敏

象牙質知覚過敏は歯の歯根の部分が外部に露出して、その部分に冷たい水や熱いものの刺激が加わると歯が「しみる」といった痛みが起こってきます。歯の歯根面はエナメル質に覆われていないため、歯冠部よりも刺激に敏感になりやすくなっています。※下図参照

歯の構造

歯の構造

 

歯磨きをしていると「しみる」といった症状も出てきやすくなります。強い力で継続的にブラッシングをしていると根元がくびれて楔状欠損(歯の根元にあるエナメル質が摩耗して象牙質がむき出しになりへこんだ欠損のこと)になり、歯がしみやすくなります。軽い症状の場合はしみ止めの薬(スーパーシール)を塗布したり、楔状欠損ができている場合はレジン充填(プラスチック素材のもので充填する方法)をすることで治ります。しかし症状が強い場合は歯肉炎を起こしているケースが多く歯髄処置(抜髄)をしなければなりません。

 

原因➁:虫歯

虫歯の初期症状(Co・C₁)の状態は、ほとんどの場合が無症状です。ある程度進行したC₂・C₃の状態で自覚症状が出てきます。C₂の状態では虫歯が象牙質まで進行した状態で、この場合の治療法としては、虫歯の部分を削って金属の詰め物やレジン充填をすることで治ります。しかし、C₃の状態(虫歯が髄まで進行している)では歯髄処置をしなければなりません。またC₃状態になると何もしていない状態でもしみるようになります。※下図参照

 

C2

C2

C3

C3

原因➂:根尖性歯周組織炎

他に痛みの種類として、「噛んだ時に痛む」「歯茎が腫れて痛い」など患者さんから聞くことがあります。これは虫歯や歯周炎がさらに進行して歯髄(神経)が壊死した場合に多く見られる症状です。歯髄が壊死してしまうと歯根尖に細菌感染が起こり炎症が波及し、膿が溜まってきます。これを根尖性歯周組織炎といいます。※下図参照

 

根尖性歯周組織炎

根尖性歯周組織炎

 

根尖性歯周組織炎になってくると、歯茎が腫れてまず噛むことができなくなります。歯も動揺し、抜歯することになるかも知れません。また根管治療や膿を出すために切開して症状がなくなったとしても予後が普通の状態よりも悪いため、近い将来ふたたび歯茎が腫れて抜歯になるケースが多いです。
「噛んだ時に痛む」の原因は虫歯や重度な歯周病のほかに歯が破折(外力などによって歯の硬組織(エナメル質、セメント質、象牙質)が折れたり割れたりすること)しているケースがあります。歯が破折している場合は食べ物を噛むと歯が割れている部分が動くため、割れている部分から細菌感染を起こし、歯茎が腫れてしまい強い痛みを感じてきます。そして歯茎の中に膿が溜まり、口臭が強くなってきます。このような状態になるとほとんどが抜歯することになります。

 

 

歯の健康を保つには・・・

「時々冷たいものがしみる」と言った軽い症状の場合、歯医者に行かずにそのまま放置されている方や痛み止めを飲んで我慢される方が多いと思います。その時は軽い症状でも進行してしまうと歯を失うことになるかもしれません。軽い症状の場合、ブラッシング指導やレジン充填、あるいはしみ止めの薬を塗布するぐらいで治ります。しかし放置してしまうことで歯髄炎、さらに進行して根尖性歯周組織炎を併発してきます。抜歯することになり歯を失うことになるかもしれません。
歯を一つ失うと噛み合わせが悪くなり他の健康な歯にも影響を及ぼします。医療は早期発見・早期治療の概念が非常に大切です。歯の健康を保つために、軽い症状であっても一度受診してください。いつまでもご自身の歯で美味しい食事が出来たらいいですね。

 

何か気になることがあればお気軽にご相談ください。

虫歯の原因と予防法について

2021年12月14日

今回は、虫歯ができるメカニズムについてお話しします。

まず食事をしますと歯の表面や歯と歯の間に食べ物が溜まります。それが長時間溜まっていると細菌の塊である歯垢ができていきます。歯垢の中には虫歯菌と呼ばれるミュータンス菌が多く存在しています。そのミュータンス菌が食べ物の中に含まれている糖分を吸収し、増殖し、酸を出していきます。この酸によって歯は脱灰され、虫歯になっていきます。口腔内には唾液がありますが、その唾液がミュータンス菌の出した酸を中和したり、唾液によって食べ物を洗い流したりすることで虫歯の予防に大きく貢献しています。

 

では、どういう人が虫歯になるのでしょうか?

五つの要因を挙げていきたいと思います。

 

①正しい磨き方をしていない人

正しい歯磨きをしていないと口の中に歯垢が多く溜まりミュータンス菌が大量の酸を出すため歯を脱灰しやすくなり虫歯になりやすくなります。※下図参照

虫歯の原因

虫歯の原因

 

②間食が多い人

お菓子などの甘いものの中には多くの糖分が含まれており、ミュータンス菌が酸を出しやすくなります。また、間食が多いと食べ物が口腔内に長く留まっている時間が多く、虫歯になりやすい環境になります。間食を少なくし、糖分の少ない食べものに変えることで大分改善されます。

③歯の質が弱い人

歯の質が弱いとミュータンス菌の出す酸に脱灰されやすく虫歯になってしまいます。フッ素の入っている歯磨き粉を使用することで歯の質を高めることができます。定期的に歯医者さんに通ってフッ素塗布をすることをおすすめします。

④唾液の量が少ない人

唾液はミュータンス菌が出す酸を中和する働きがあるため、唾液が少ないと歯の脱灰がされやすくなるため虫歯にもなりやすくなります。食事の際、よく噛んで食べると大量の唾液がでるため虫歯の予防になります。また食事以外の時にキシリトールガムを噛むことで唾液を出す機会を作ることもできます。キシリトールガムにはフッ素が含まれているため歯質の強化にもつながります。

⑤虫歯治療で金属やレジン充填をしている人

虫歯の部分を削って金属の詰め物やレジン充填(プラスチック素材のもので充填する方法)をした場合、年数が経過するうちに変色してしまったり、詰め物と歯の境目が虫歯になってしまいます。これを二次カリエス(カリエスとは虫歯のことを指します)と言います。可能であれば、精度の高いセラミックの冠や詰め物をすることをおすすめします。

※自費診療ではありますが、セラミック素材の冠や詰め物は強度もあり、汚れが付きにくく、変色もしにくい、また見た目の美しさや金属アレルギーに対応、というメリットがあります。

 

最後に、虫歯を予防する方法をお伝えします。

一番大事なことは、「正しいブラッシングを行うこと」です。

正しいブラッシングで歯垢の除去を行い、磨きにくい歯と歯の間は歯間ブラシやデンタルフロスで丁寧に汚れをしっかり取り除くことです。また年に3回くらいは歯医者さんに行って専門器具でしっかりと汚れを除去するようにしましょう。

次に、「食生活の見直し」です。

間食の量や回数を減らし、糖分の摂取を減らしていくようにしましょう。例えばチョコレートやキャラメルなどは糖分が多く歯にくっつきやすいため虫歯の原因になります。ただ糖分の多いものを食べても、その後すぐに丁寧に歯磨きをすることで虫歯予防につながります。飲食後は歯磨きをすることを習慣にしましょう。

虫歯の予防をしっかりと行って、いつまでも自分の歯を大切にしていただきたいと思います。そのためにもご自分で正しいブラッシングができているか確認するために定期的に歯医者さんに行ってブラッシング指導を受けていただけたらと思います。

 

何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

12・1月休診日のお知らせ

2021年12月1日

12月19日(日)休診日
12月29日(水)9:00~11:00 診療時間変更

12月30日(木)~1月3日(月)お正月休み
1月23日(日)休診日

学会出席の為、お休みをいただいております。
その他日・祝日は通常通り診療しておりますので
よろしくお願いいたします。

11月休診日のお知らせ

2021年11月19日

【休診日】

11月21日(日)

学会出席の為、お休みをいただいております。
その他日・祝日は通常通りの診療となります。

宜しくお願い致します。

歯肉炎と歯周病の予防法と治療法

2021年11月16日

本日は、歯肉炎・歯周病の予防法と治療法ついてお話いたします。

よく患者さんから毎日歯磨きしているのにどうして歯周病になるのか?
また、歯周病は治りますか?という質問がよくあります。
その答えをお答えします。

まず、歯周病の原因からお話しします。

歯周病は不十分なブラッシングによって歯と歯の間、あるいは歯茎の境目などにプラークが溜まりそのプラークの中にある細菌によって歯の周りの歯周組織に炎症を起こし、やがて歯を支えている歯槽骨を溶かしてしまう病気です。
初めは歯間から出血するぐらいですが、歯の周りにある歯槽骨が吸収してくると歯茎が腫れてきます。
さらに歯周病が進行していくと痛みが出て噛めなくなったり、歯がグラグラして歯を失ってしまうことになります。
初めは歯槽骨が吸収していなくて、歯茎だけが少し腫脹している状態を歯肉炎といいます。これは歯周病の初期段階と言えます。

歯肉炎の場合は正しいブラッシング指導をして、手用スケーラー、または超音波スケーラーでしっかりと歯石除去を行っていただければ治ります。P(軽度な歯周病)の場合は、ブラッシング・歯石除去、さらにルートプレーニングを行い歯石か再付着をしないように根面を滑沢にしていくと治ります。ただP₂(中等度の歯周炎)になるとブラッシングや手用スケーラーだけでは歯肉の中にあるプラークや歯石は取り除くことができません。
そこで歯周外科処置(FOP)が必要となってきます。
FOPとは歯肉を剥離し歯根面に付着した歯石を除去しさらにルースプレーニングし、その後縫合します。
P₃(重度な歯周病)になるとほとんどのケースは、噛めなくなったり、歯が動揺して抜歯しなくてはならなくなります。

このように歯周病は早めに治療することで歯を失う事なく治る病気ですので、毎日のブラッシングや
定期的に歯医者に行く等のメンテナンスを受けてもらうことが重要になってきます。
ブラッシングにおいてプラークが溜まりやすい部位(歯と歯の間)などは通常のブラッシングでは完全にプラークを除去しにくいケースがあります。その時はデンタルフロス・歯間ブラシ等歯間清掃用具を使用することをお勧めします。
また毎日ブラッシングをしていても歯ブラシの毛先が曲がっているものを使用していたり、正しいブラッシング法をされていない場合完全にプラークを除去しきれずに歯周病になってしまいます。
「ブラッシングをすると歯肉から出血するようになった」あるいは「少し歯茎に違和感を感じる」という症状を
感じた場合は歯医者に行かれることをお勧めします。また以前治療して被せ物が入っている方は注意が必要です。
被せ物がぴったりと合っていれば問題ないですが、合っていない場合はプラークが溜まりやすく歯周病の原因となります。みなさま歯医者で定期的なチェックをしてもらってください。

11月になり少しずつ寒くなってきましたね。体調を崩されませぬようご自愛ください。

メンテナンスの重要性について

2021年10月30日

本日は¨メンテナンス¨についてお話いたします。

皆さんはどのような時に歯医者に行かれますか?
ほとんどの方は何か困ったとき、例えば歯が痛い、歯茎が腫れた、噛めなくなったといった何か症状が出た時に行かれると思います。
しかし症状が出た時には多くの場合、歯周病あるいは虫歯が進んでいる状態です。

まず、歯周病を例にとってお話しします。
歯周病は大きく4つに分類されます。

G………歯周炎(歯茎に炎症はあるが歯槽骨の吸収はみられない)
P₁………軽度な歯周炎(歯槽骨の吸収は見られるが歯槽骨の1/3以下の吸収に滞まっている状態)
P₂………中等度な歯周炎(歯槽骨の吸収が歯根の1/3~2/3まで進んでいる状態)
P₃………重度な歯周炎(歯槽骨の吸収が歯根の2/3以上進んでいる状態) 

G(歯周炎)やP(軽度な歯周炎)の場合はブラッシング指導や歯石除去(スケーリング)で治りますが、P₂(中等度の歯周炎)、P₃(重度な歯周炎)の場合、簡単には治りません。なぜなら、ブラッシングや歯石除去をしても歯槽骨の吸収が奥まで進んでいるため歯ブラシの毛先が奥まで届かず、治すことができないのです。
その為、治療法として麻酔してポケット内をしっかりと時間をかけて搔爬したり、場合によっては歯周外科処置(FOP)なども必要となってきます。
また、P₃の場合ほとんどのケースが抜歯になります。

次に虫歯についてお話しします。
虫歯も大きく4つに分類されます。

Co………虫歯のなりかけ
C₁………初期の虫歯(エナメル質内に限局したカリエス)
C₂………エナメル・象牙質まで虫歯が進行している状態
C₃………歯髄に虫歯が進行している状態
C₄………残根状態

多くの場合C₂、C₃、C₄の状態になった時に自覚症状が出てきます。このような状態になって歯医者に来院される方が多いです。C₂の場合だと歯の神経を残して治療が可能ですが、C₃になると歯髄処置をしなければなりません。このようなケースは来院回数・治療期間が長くなり、また患者様への負担も大きくなります。さらに、C₄になると抜歯しなければなりません。
Co・C₁の状態では少し削合して詰めるだけなので、治療回数も1回で終わります。なので、カリエス治療の観点からも定期的なメンテナンスが必要となっていきます。

当院では、3~4ヶ月に1回のメンテナンスをお勧めしています。
メンテナンスとしてブラッシング指導・歯石の除去(スケーリング)・プロフェッショナルケア(PMTC)・カリエスチェック・歯周ポケットチェックなどを行っています。
歯周病、虫歯にならないように、また、歯周病や虫歯の早期発見、早期治療を行い病変ができるだけ進行しないようにしています。歯周炎治療、虫歯治療が終了した後、これで終りという考えではなく、定期的なメンテナンスをしていただけたらと思います。

今年も2か月あまりとなりました。
コロナも落ち着いてきていますが、今までと同じように感染対策を怠らず頑張っていきたいと思います。
また、何か気になることがあればお気軽にご相談ください。

インプラントについて

2021年10月19日

本日は“インプラント治療”についてお話ししたいと思います。
インプラントについて皆さんどのようなイメージをお持ちでしょうか?

インプラントは歯を抜歯して歯を失った場合、その失ったところにどのように歯を作るか、その1つの治療法です。歯を作る方法は主に3つの方法があります。1つ目は入れ歯、2つ目はブリッジ、3つ目がインプラントです。
入れ歯、ブリッジ、インプラントこの3つの方法にはそれぞれ利点・欠点があります。

■入れ歯の利点
➀保険内で治療を受けることができる
➁インプラントのように外科的な治療を必要としない
➂治療期間も短い

■入れ歯の欠点
➀その都度取り外しをしなければならない
➁違和感を感じる
➂喋りにくい
➃入れ歯の内側に食べ物が挟まり不衛生である
➄歯にクラスプと言われる金具を入れるため金具を付けている歯を将来ダメにしてしまう

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■ブリッジの利点
➀入れ歯と同じく保険内で治療が受けられるため安価で治療が受けることができる
➁固定式のため入れ歯と違い違和感が少ない
➂自分の歯と同じ感覚で食事ができる
➃入れ歯と同様に治療期間が短い

■ブリッジの欠点
➀支えとなる歯を削るため、その歯に対して負担がかかる
➁ブリッジの部分は物が溜まりやすく不衛生
➂保険では銀歯になってしまうため見た目が悪い
➃多数、歯が抜けている場合対応が出来ない

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■インプラントの利点
➀入れ歯のような違和感がない
➁自分の歯と同じように咀嚼ができる
➂ブリッジと同じく支えの歯を削らないため他の歯に対して負担が少ない

■インプラントの欠点
➀インプラント治療は保険外治療なので高価である
➁外科的治療を必要とする
➂治療期間が3~6ヶ月程度かかる

また、インプラント治療は全ての患者さんに出来るわけではありません。骨が少ないケースでは、インプラント治療ができないこともあります。
一昔前はインプラント治療は骨の少ない場合は治療適用外と言われていました。しかし最近では骨が少ないケースでもインプラント治療が可能になってきています。それは特殊な術式を使って行われているからです。
代表的なものは、“サイナスリフト”、“ソケットリフト”、“GBR”といった術式です。これらの術式を行い骨が少ない場合でも骨を増やしインプラント治療が行えるようになりました。
100%できるわけではありませんが適応範囲は広がっています。平均寿命という観点から考えると、入れ歯は4年、ブリッジは7年、インプラントの場合は10年で90%以上は生存しているので他の治療法よりも2倍以上平均寿命が長いと言えます。

以上のことをふまえて、どういった治療を選ぶか考えていただくことをおすすめします。ただ、どの治療を選択するにしてもしっかりとメンテナンスはしていただきたいと思います。
口腔内が不衛生になってしまうとどの治療を選んでも寿命は短くなってしまいます。口腔内が不衛生だと、せっかくインプラント治療を行ってもインプラント周囲炎になり、すぐに抜けてしまうことがありますのでご注意ください。

最後になりますが最近寒くなってきましたので、どうぞ皆さまお体に気を付けくださいませ。
何か気になることがあれば、気軽にご相談ください。