「親知らずを抜いた方がいいですか?」という質問を患者さんからいただくことがあります。
当院では親知らずを抜く場合と、抜かずに保存する場合があります。
今回は、その違いについてお話ししたいと思います。
はじめに、親知らずの生え方と、それに基づき抜歯をする可能性について説明します。
親知らずの生え方について
親知らずの生え方には大きく分けて3つのパターンがあります。
①綺麗な状態で生えていて歯冠全体が見えている状態
②半分だけ生えていて半分は歯茎がかぶさっている状態
➂完全に埋伏している状態
図1(上図参照)の場合は、虫歯や歯周病になっていなければ問題ないため痛みが無ければ保存することが多いです。また上下できちんと咬みあっている場合は保存します。しかしながら虫歯や歯周病になっているケースもあります。なぜなら親知らずは口の中の一番奥にあるため、どうしても不潔域になりやすいという特性があります。虫歯がC₃になって歯髄処置してもまたすぐに痛んでくる場合があります。また歯周病にもなりやすいため、このような場合は抜歯をした方が良いと思います。また、咬み合わせが悪いケースも抜歯をすることがあります。
図2(上図参照)の場合は、図1よりも問題が起こりやすい状態です。上記で触れたように歯肉と親知らずの間にプラークが溜まりやすく歯みがきをしても毛先が届きにくいため不潔域になりやすいからです。このため歯茎が炎症を起こし、腫れたり痛みが出たりします。このような場合は抜歯をお勧めします。
図3(下図参照)の場合は、虫歯や歯周病になることはほとんどありません。ただ、親知らず付近に膿疱がたまって痛みが出る場合があります。その場合は抜歯をお勧めします。
図3の場合はそのまま放置しておくと上の親知らずが咬んだ時に下の歯肉に当たって、歯肉を傷つけるようなケースがあります。このようなケースも抜歯をした方が良いと思います。患者さんから抜歯をしたくないと希望がある場合は親知らずを削って咬み合わせの調整を行い下の歯肉に当たらないようにします。ただ、歯というものは咬み合わせの相手がいないと歯が伸びてきますのでまた下の歯肉をいずれ傷つけることになります。将来のことを考えると抜歯されるのがよろしいかと思います。
最後に事例をひとつお話しします。
本日、左上の親知らずに物が引っかかるとの主訴で来院された患者さんがいらっしゃいました。当院では親知らずの場合、痛みがあり治療ができない場合、尚且つ対合歯がない場合(咬合に関係ない)は抜歯を薦めています。患者さんの希望も考慮して最終治療方針を決定するのですが、今回の場合は患者さまが抜歯を希望していなかったため穴が空いているところを充填して引っかかりをなくすという対応をさせていただきました。ただし今後痛みが出ることがあった場合は抜歯をしましょうとお伝えしました。抜歯の可能性を覚悟していらっしゃった患者さんはホッとした様子でした。
当院では、患者さんおひとりおひとりに寄り添った歯科診療を心掛けております。
何かございましたらお気軽にご相談くださいませ。