最近では、子どものむし歯は減少傾向にあります。しかし、乳歯列期(3歳頃から6歳頃まで)の不正咬合が若干増加の傾向にあります。不正咬合とは、歯並びが不揃いで上下の歯がきちんと噛み合わない病気のことです。食べ物をしっかり噛めないだけではなく、歯の掃除も不十分になり、歯周病や虫歯を引き起こすこともあります。
目次
子どもの不正咬合の原因
大きく分けて3つあげられます。
➀遺伝
両親が上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口)になっている場合、子どもも親の遺伝の影響で骨格が似ているため出っ歯や受け口になるケースが多いです。
➁むし歯
むし歯は小児の歯並びに大きく影響してきます。例えばC₃(歯髄まで虫歯が進行している状態)になると食事をしていると痛みが走ることがあります。そうすると虫歯によって痛む場所を避けて、別の歯で噛むようになります。そうなると、顎の発育やそのあたりの筋肉の発育に悪影響を及ぼし不正咬合を起こしてしまいます。その他に虫歯がC₄まで進行してやむなく乳歯を抜いた場合、永久歯の交換期であれば問題ありませんが、そうでない場合抜いた乳歯の両隣の歯が傾斜して、のちに永久歯が正しい位置に萌出できなくなり、不正咬合を起こしてしまいます。
➂口腔習癖
口腔習癖で代表的なものは指しゃぶり、おしゃぶりです。その他には舌癖、唇をかむ、爪を噛む、口呼吸などが挙げられます。
子どもに多い不正咬合の種類
以下の4つがあげられます。
①上顎前突(出っ歯)
上の前歯が強く前に傾斜したり、上の歯並び全体が前に出ている状態のことです。上下の顎の発育バランスが悪かったり、下唇を噛むことが原因とされています。永久歯の前歯が生え揃う8歳くらいからの矯正治療がおすすめです。
②叢生(そうせい)
歯がねじれたり、重なり合ってガタガタになってしまっている状態のことです。
③下顎前突(受け口)
下の前歯が強く前に傾斜していたり、下の歯並び全体が前に出ている状態のことです。これは、遺伝や顎の発育バランスが原因とされています。前歯で食べ物が食べにくく、発音が不明瞭になり顎関節症を引き起こすリスクがあります。早期ですと5歳ぐらいから治療が必要になることがあります。
④開咬
奥歯を噛み合わせた時に、前歯に隙間ができている状態のことです。長期の指やしゃぶりやおしゃぶりの使用、口呼吸などが原因とされています。指しゃぶりやおしゃぶりの使用などが終わり、6歳~8歳くらいから矯正治療を始めることをおすすめします。
以上の中では、叢生(そうせい)が一番多く見られます。
不正咬合の予防法と治療法
小児の不正咬合を予防するには、口腔習慣の改善が必要です。
口呼吸の改善
口を閉めるように心掛けさせる。
指しゃぶり
永久歯に生えかわる時期までにやめさせるよう注意する。
舌癖
舌癖があると舌で前歯を押す力が働き、出っ歯や、開咬になります。予防法として、「あいうべ体操」※1、「口輪筋トレーニング法」※2がおすすめです。
あいうべ体操 ※1
「あー」「いー」「うー」「べー」と1日1回、10回セットで行う体操です。
この体操を行うことによって、舌を正しい位置に矯正することができます。舌癖がある子どもに有効な予防法です。
口輪筋トレーニング法 ※2
舌癖によって、口の周りの緩んでいる筋(口輪筋)を鍛える方法です。特殊な装置を使用することになるので、一度歯医者さんに行って相談してください。
虫歯の治療
虫歯になって痛みがでると、痛みのある歯を避けて食事をするようになります。そうなると子どもの顎の成長に影響が出てきます。また、虫歯のため乳歯早期喪失した場合、不正咬合になりやすいです。そのため、虫歯の予防・治療はしっかりと行わなければなりません。
遺伝による場合
遺伝によって親と骨格が似ているため不正の咬合になっているケースは歯科矯正治療が必要な場合が多いです。早めに歯医者に相談されることをおすすめします。診査、診断によって歯科矯正を適切な時期に始めることが重要です。
時々、保護者の方から「子供があまり気にしてない。このままにしておいてもかまいませんか?」という質問をされることがあります。不正咬合を放置すると下記のような症状が起こります。
・虫歯、歯周炎のリスクが高くなる
・発音がしにくくなる
・顎関節症(顎の痛み)が出てくる
・嚙みにくい
「歯の噛み合わせが悪いだけ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、不正咬合になってしまうと、体に様々な影響が出てしまいます。不正咬合の種類によって矯正を始める時期、矯正装置、矯正期間も変わってきます。不正咬合がある場合は、早めに歯医者さんに相談して、適切な処置を行うことをご検討ください。
子どもさんの不正咬合について何か気になることがあればお気軽にご相談ください。