入れ歯は、食べ物を噛んだり飲み込んだりするとき、また発音をしやすくしたりする大切な役割をしています。しかし、入れ歯の取り扱い方、使用方法(着脱方法)が間違っていると入れ歯が合わなくなり、上手に機能しなくなります。
では、入れ歯の手入れを怠るとどうなるのでしょうか。
当たり前のことですが、プラークが付着して次のようなことが起こってしまいます。
➀残存歯が虫歯や歯周病になる
➁入れ歯にプラークがついたまま放置することになるため、口臭の原因になる
➂入れ歯が変形して合わなくなる
④特に高齢者の方の場合、全身疾患を起こしやすくなる
上記のような状態を避けるためには正しい入れ歯のお手入れがとても大切になってきます。また、最近では口腔内のケアが不十分で歯周病が悪化し、そのことが原因で誤嚥性肺炎を引き起こすケースが増えているので、特に注意が必要です。
目次
正しい入れ歯のお手入れ方法をマスターするには…
洗浄方法
➀食後に洗浄(以下の点に注意)
・流水下で清浄する
・義歯用歯ブラシを使って磨く
義歯用歯ブラシは通常使用している歯ブラシよりも毛が硬く、入れ歯の汚れを良く落とすことができます。特に汚れが付きやすいクラスプ周辺は丁寧に磨く必要があります。

義歯ブラシ

汚れがつきやすいクラスプ周辺
②入れ歯洗浄剤を使用しての洗浄(1日1回)
義歯用ブラシだけでは菌(カンジダ菌)までは落とすことが困難です。先日、歯磨き粉をつけて磨いています、という患者さんがいらっしゃいました。歯磨き粉の中には研磨剤が含有しているため、入れ歯が傷ついたりすり減ったりすることがあります。歯磨き粉の使用は避けてください。ブラシの毛先が届きにくいところは綿棒などを使用してみると良いと思います。
入れ歯の着脱方法
特に部分入れ歯においては注意が必要です。
部分入れ歯の場合は2つ以上金具(クラスプ)がかかっています。この金具の部分が残存歯にしっかりと固定されることで、入れ歯が食事中に外れないように維持装置としての働きをしています。そこで、入れ歯を取り外す際に注意いただきたいことがあります。1つの金具だけを外そうとしても上手く入れ歯を外すことはできないため、2つの金具を同時に外す必要があります。無理やり外そうとすると歯肉が痛んだり、入れ歯が壊れたりするので要注意です。
上顎の部分入れ歯の場合
金具を爪で引っかけ、下に向けてゆっくり外してください

部分入れ歯(上顎)
下顎の部分入れ歯の場合
金具を爪で引っかけ、上に向けてゆっくり外してください

部分入れ歯(下顎)
逆に、部分入れ歯をつけるときは、どの歯に金具(クラスプ)がついているかを確認し、金具を歯にかけていきます。ある程度入ったら指全体を使って、部分入れ歯全体をゆっくりと押し込んで装着してください。着脱方法を間違えると金具で歯が痛んでしまいます。なかなか着脱が上手くいかない場合、かかりつけの歯医者さんに行って指導を受けてください。
入れ歯安定剤について
入れ歯安定剤は総入れ歯・部分入れ歯を装着した時に、吸着力が弱く食事中や会話をしている時に外れてしまう場合に使用します。当院では、出来る限り入れ歯安定剤を使用しなくてもしっかりと吸着する入れ歯の製作を心掛けています。顎堤が弱く(歯茎の盛り上がりが少ない状態)、通常通り入れ歯を作成しても吸着が弱いと考えられる方には入れ歯安定剤の使用をお勧めすることがあります。

入れ歯安定剤
入れ歯安定剤の使用方法・注意点
➀入れ歯の内面をしっかり洗浄し、ガーゼなどで水分をふき取る
➁しっかりとうがいして口の中を清潔にする
➂小豆大の量を入れ歯の数ヶ所につけて入れ歯を装着し、1~2分間ほど軽く押さえる
入れ歯安定剤は粘着性が高く、洗浄では完全に除去しにくいです。古い入れ歯安定剤が残っていると菌の繁殖に繋がり、口内炎やカンジタ症になってしまうのでしっかりと洗浄してください。入れ歯が外れやすいからといって入れ歯安定剤を頼ることは衛生上好ましくないこともあります。使用の際には、一度かかりつけの歯医者さんで相談されてからのご使用をお勧めします。
正しい入れ歯のお手入れをマスターして、健康的な口腔内を保ちましょう!!