神経を取り除く治療(根管治療)をして被せ物をしたのに、「1~2年したらまた痛みが出てきた」、「毎日一生懸命歯磨きをしているのになぜ痛くなるの?」という質問をいただくことがあります。
根管治療を行った後に痛みが出る原因にはどういったものがあるのか、今回はお話しします。
目次
➀根の中に神経、または神経の残骸が残っている場合
根管内(根っこ)はとても複雑な構造をしているため、歯の神経を完全に取り除けていない(残髄)のケースが考えられます。もともと根管治療を行わなければならない虫歯の進行度はC₃以上となります。神経が炎症を起こしていたり、また酷いときは神経が腐っていることがあります。このようなケースの場合、神経を一部でも残してしまうと根っこの先にある歯根膜が炎症を起こし歯根膜炎を引き起こしてしまいます。「咬むと痛い」という症状がある時は、まず神経の取り残しの可能性を考えます。
治療法
根管内の残髄の場合は、根管内をしっかりと消毒し、残髄や根管内に残っている腐敗物を取り除けば治っていきます。
➁根管が炎症を起こしている場合
根管治療中に使用した器具によって根尖(こんせん・歯根の先端のこと)部分に刺激が加わったため炎症を起こしてしまうことで痛みが発生することがあります。
治療法
根管内をしっかりと消毒していけば大丈夫です。痛みを軽減させ根管治療を行っている歯を安静に保つため、咬み合わせを調整することで負担を掛けないようにします。また、抗生剤、鎮痛剤の投与も併用します。
➂歯根破折(歯が折れたり、割れたりすること)している場合
破折部分から細菌が侵入して、歯肉が腫れたり、膿がでたりします。また噛むと違和感がでたりします。
治療法
抜歯をします。
根管治療をすれば虫歯が再発する心配もなく完治すると思っている方が多くいらっしゃるかもしれません。しかし、根管治療は100%成功するわけではありません。根管治療を始める歯の状態で予後がいいか悪いか決まってきます。
当院では根管治療に必要な患歯を4つに分類して、予後(成功率)を考えています。
ステージⅠ:成功率 約90%
・今まで神経の治療を一回もしたことがない
・虫歯の進行度がC₂~C₃の状態
・根尖に病巣がない状態
このようなケースは根管治療の成功率も高く、予後も良いと思います。
ステージⅡ:成功率 約75%
・今まで一回も根管治療をしたことがない
・神経が腐り、根尖が病変していることがレントゲン写真で確認できる
ステージⅠよりも成功率は低くなりますが、比較的予後は良いです。根尖病巣が大きい場合は抜歯するケースもありますので注意する必要があります。
ステージⅢ:成功率 約50~60%
・今までに1、2回根管治療をしたことがある
・根先に病変が見られる
ステージⅢになると予後、成功率ともにかなり落ちてきます。また、一回目の根管治療で歯自体がもろくなっており、破折している可能性もあります。
ステージⅣ:成功率 ほぼ0%
・今までに何回か根管治療をしている
・根尖に大きな病変が見られ、歯周病の合併症がある
抜歯になることが多いです。
以上のことから、一度根管治療をすれば確実に口腔内の健康が約束されるわけではないことがお分かりいただけたかと思います。自分の歯を長持ちさせるには、抜髄(細菌感染してしまった歯髄を取り除いてこれ以上感染が広がらないようにご自身の歯を守るための治療)をしない事です。また、1回目の根管治療後を大切にすることです。根管治療も2回、3回と繰り返すとだんだんと予後が悪くなります。「痛くなったら歯医者さんに行って根管治療をしてもらえば良い」、「根管治療途中で痛みがなくなったから大丈夫!」と考えていると歯を失うことにつながりますので気をつけてください。
根管治療について気になることがありましたらお気軽にご相談ください。