皆さんは歯が痛くなったら、歯科医院に行かれると思います。
しかし、1本の歯に対して何回通っても痛みが治まらない経験はありませんか。
そのほとんどは、根管治療(歯の根の治療)に関することが多いです。
歯医者さんは一生懸命に歯を残そうとして根管治療を行います。しかし、根管治療を続けても症状の改善がみられないケースもまれにあります。
そのような場合、歯医者さんによっては、「歯の根の状態があまり良くないので抜歯しましょう」と言われることも少なくありません。
では、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。
実は根管治療をしても、原因となっている感染源を完全に除去できていないからです。
根尖部(根っこの先)に膿が溜まったり、嚢胞ができていたりすると、専用器具などで消毒を行っても、根尖部にある膿や嚢胞を完全に取り除くことが出来ません。
抜歯をすれば膿は抜歯した所から完全に取り除くことができます。
しかし、そうなると、欠損部(歯を抜いた所)の治療として、インプラント・ブリッジ・入れ歯などの治療を考えなければなりません。
できれば自分の歯を残したい気持ちは強いのではないでしょうか。
当院では、そのような場合、歯根端切除術を行うことがあります。
歯根端切除術の術式をお話します。
①局所麻酔を行います。
②CTやエックス線写真で確認し、膿の袋のある付近を切開します。
③剝離(はくり)し、感染源の確認、感染源となっている部分の歯槽骨を削り、穴をあけます。
➃穴から嚢胞を取り除き、洗浄・消毒を行います。
⑤根尖部の歯根を2~3ミリ程度切断します。
⑥切断した所から、根充剤を入れていきます(逆根管充填)。
⑦MTAセメントなどで、根尖部の切断面を封鎖していきます。
⑧縫合し、術後は、抗生剤・鎮痛剤を投与します。
⑨2~3日後に消毒、1~2週間後に抜糸をします。
術後2~3日は、少し腫れや痛みがありますが、1~2週間後には落ち着いてきます。
歯根端切除術のメリット・デメリット
★メリット
場合によっては、抜歯しないで、歯を残せる可能性がある。
★デメリット
術後、痛みや腫れが出ることが多い。
再発リスクがあるため、必ず成功するとは限らない。
歯根端切除術は、1根管(歯の根が1本)の歯に処置することが多いので、3根管あるような場合は、術式も困難になり成功率も下がってしまします。
当院では前歯に使用することが多いです。
歯根端切除術の成功率
以前は、成功率は低いものでしたが、最近では、拡大鏡の使用やMTAのセメントなどの封鎖性の高い材料が開発され、成功率は上昇傾向(70%程度)にあります。
再発リスクがあることと、予後が悪く、抜歯になってしまうケースもありますので、その点は理解しておく必要があります。
当院ではATMセメントは2年ほど前から、マイクロスコープは2ヶ月ほど前から導入しております。
当院での歯根端切除術したケース(1ヶ月程前)
上の前歯で、根尖病巣もありましたが、根尖付近まで金属の土台が入っていました。
本来は、この金属の土台を取り除いて根管治療を行わなければならないケースですが、土台が根尖付近まであり、除去が困難だと判断しました。歯肉は腫れています。一度切開したのですが、完全に感染源を取り除くことが出来なかったため、再度腫れてきました。
土台を取り除くことも考えましたが、取り除く際に歯の根に亀裂が入ってしまう可能性が大きくありました。
このようなことから、歯根端切除術を行うことにしました。
今回初めてマイクロスコープを使用して歯根端切除術を行いました。歯牙に亀裂がないかどうか、MTAセメントにて、しっかり封鎖できているかどうか確認しながら、行いました。
現在は抜糸を行い腫れもありません。まだ、1ヶ月程しか経過していないので成功したとは言えませんが、しっかりと経過観察していきたいと思っています。そして、歯根端切除術の成功率をより一層高めていきたいと思っております。
歯根端切除術は根管治療では治らないケースで行います。
治療は保険内で行えます。
術後、腫れや痛みが出ること、再発して、結局は抜歯になる可能性があることを考慮した上で、歯根端切除術を行うかどうか判断する必要がありますね。この治療法によって少しでも歯の保存につながればいいなあ。と思っております。
また、何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。