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歯の神経を抜くべきかどうか

2024年7月17日

みなさんは、虫歯の治療で、歯医者さんに行かれると思います。軽度な虫歯の場合は、虫歯の部分を除去して、その部位に詰めるといった治療が多いのではないでしょうか。しかし、虫歯がある程度、大きくなっている場合は、歯医者さんから、「何とか歯の神経を残せそうですね。」とか、「これは、虫歯が大きいので、神経を取るしかないですね。」と言われる方が多いと思います。多くの歯医者さんでは、できるだけ、神経を残そうとします。どうして、神経を残そうとするのでしょうか。

「歯の神経を抜く」という言葉を耳にしたことはありませんか?歯の神経を取るということは抜髄治療を意味します。抜髄治療は、虫歯(C3以上)か外傷などによって歯の神経が炎症を起こしたり、感染した時に行われる処置です。

しかし、この根管治療、あるいは抜髄治療にはメリット・デメリットがあります。

《メリット》

〇痛みの軽減

虫歯や外傷などによって、神経が炎症を起こしたり、感染したりすると痛みが生じることが多いです。時には激しい痛みを生じることがあり、食事が上手くできなくなったり、場合によっては何にもしない時でもズキズキと激しい痛みを感じ、夜も眠れないことがあります。このような症状が出た時に抜髄、あるいは根管治療を行うことにより、痛みを軽減させることが出来ます。

〇感染拡大を防ぐ

歯の神経が感染すると、他の部位に感染が広がっていきます。例えば、歯の神経が感染を起こし、それを放置すると、根尖付近の骨に感染していきます。後に根尖性歯周炎という病気に発展していきます。

 

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さらに根尖性歯周炎が進行すると歯を支えている骨(歯槽骨)が吸収されていきます。

 

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進行すると最悪の場合抜歯しなければなりません。

歯髄炎(歯の神経の炎症)の場合でも歯髄が生きている場合は、歯髄の細胞が保有している免疫機能により、細菌の増殖を抑制することができますが歯髄が感染して、壊死してしまうと、歯の中に細菌が増殖して感染が広がり、根尖性歯周炎になってしまいます。感染拡大の防止には、根管治療、抜髄処置は必要になってきます。

 

《デメリット》

〇歯の脆弱化

神経を抜いた歯は、無髄歯と呼ばれています。本来、歯の中には歯髄(歯の神経)があり、この歯髄には、血管が通っており、血管から栄養を供給しています。歯髄がなくなると栄養供給口がなくなってしまい、歯のそのものが脆くなり、歯が欠けたり破折するリスクが高くなります。

〇歯の変色

神経を抜いた歯(失活歯)は時間が経って茶色や黒っぽい色に変色してしまいます。これは歯の神経を取ることによって歯髄の中にある血管も失うことになります。そうすると歯に栄養供給がなくなり、歯の内部に変生物が沈着し、変色が起こっています。これが変色の原因です。

〇感覚の喪失

神経を抜いた歯は、歯の感覚が消失してしまいます。このことによって、冷たいものにしみるとか熱いものにしみるといった感覚がなくなります。これは歯髄炎が起こった時にはメリットになりますが、長期的には、歯に対して問題が起きた時に、自分で気づきにくくなります。このことで早期発見、早期治療が困難になります。何か異変に気づいた時は、病変がかなり進行しているケースが多く、最悪の場合、抜歯しなければならないこともあります。歯の神経を処置した場合は定期的に歯医者に行って、検診を受けたり、メンテナンスを受けることをお勧めします。

〇治療期間が長くなる

歯の神経処置を行った場合、その後何回か通わなければなりません。時々患者様の中で歯の神経処置をしてもらって、痛みがなくなったので、もう大丈夫と思って、歯医者に通院しなくなる人がいます。これは間違った考えですので気をつけてください。神経処置を行った後は、痛みが完全になくなるまで歯の根管を消毒し、そして根管内に最終的なお薬を詰めます(根充)。そして最後にクラウン(被せ物)を装着することになります。なので、神経処置を行った歯に対して、最低でも数回は歯医者に通わなければなりません。治療期間は2ヶ月くらいはかかります。

〇再治療が必要になるケースが多い

歯の神経処置を行っても、根管内再感染が起こり、痛みが出てくることがあります。例えば、歯の根管治療を行ったつもりでも、歯の根尖部分に神経が残っている場合は再感染を起こすことになります。当院では、エンドメーターを使用して、根管長を測定し、感染した神経を完全に除去することにしています。

エンドメーター

以上、歯の神経を処置した時のメリット・デメリットについてお話ししました。

歯の神経を取る処置(抜髄)には、メリットもありますがデメリットも多いです。よく患者様に「歯の神経を抜いた方が良いかどうか」と質問をされることがあります。

神経を抜かないと痛みが治まらないケースは、根管処置はしなければなりませんが、長期的に考えると、私は、歯の神経を抜く治療は歯の寿命を短くすると考えています。なので、できるだけ神経を抜かないで治療することを考えています。

当院では、神経を取る処置(抜髄)をしないで、神経を残す治療を積極的に行っています。その治療法として「歯髄温存療法」が代表的な治療法です。

 

歯髄温存治療法には間接覆髄法と直接覆髄法の2種類があります。

➀間接覆髄法

虫歯治療において、虫歯が歯髄近くまで進行しているか、虫歯を除去した状態で歯髄が露出していない場合に行われる治療法です。

➁直接覆髄法

虫歯において、虫歯を除去した時、歯髄が部分的に露出した状態に行われる治療法です。

 

このようなケースでは間接覆髄法の場合、残った象牙質の上に保護材を置き、その上に詰め物をします。

直接覆髄法のケースでは、部分的に露出した歯髄をしっかりと消毒し露出した歯髄の上に保護材を置き、その上から詰め物をします。

当院では、この保護材において、MTAセメントと従来の水酸化カルシウム製剤の2種類を使用しています。

➀MTAセメントの特徴【保険外】

MTAセメントの特徴としては、封鎖性・殺菌性に優れたはの治療剤です。

また、MTAセメントの成分が水分と反応するときに、水酸化カルシウムが生成され、抗菌作用が望まれます。また、第二象牙質の形成の促進作用があり、以前は歯髄が部分的に露出していた場合は、直ぐに抜髄を行っていましたが、最近では、MTAセメントを使用することにより、歯髄が残せるケースも出てきました。また、封鎖性も優れているため、細菌感染のリスクが少なくなります。

➁水酸化カルシウム製剤の特徴【保険内】

従来の水酸化カルシウム製剤は、PHがアルカリ性なので、抗菌作用があります。また第二象牙質の生成を促進する作用があります。ただ、従来の水酸化カルシウム製剤はなかなか硬化しないため、封鎖性に劣る面があります。その為細菌感染を起こすリスクが高まります。さらに強度が低いため、長期間の使用には問題が出てきます。

MTAセメントの使用は、従来の水酸化カルシウム製剤に比べて、深い虫歯でも、神経を残せる可能性が高くなります。ただ、全ての症例において、使用できるわけではありませんので、その点は注意していかなければなりません。

また、MTAセメントは高価な材料のため、保険外治療になりますので、治療費が高くなることは頭に置いておかなければなりません。

MTAセメントを使用する場合は、視診やレントゲン写真だけでは判断ができないケースもあります。また、歯の痛みが強い場合は、従来通り神経を抜く(抜髄)をしなければならないケースも多いです。神経を処置するかどうかは歯医者さんと相談してから行わなければなりません。また、神経処置を行った場合は、治療が終了した後も3~4ヶ月に一度、歯医者に通って定期検診やメンテナンスを行ってください。そして長くお口の中の健康を維持していけたらと思います。

また何か気になることがあれば、気軽にご相談ください。

 

 

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