
以前は、歯科医院の専門職として歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付が挙げられていました。しかし、最近ではトリートメントコーディネーター(Treatment Coordinator『TC』と表記されることもある)の存在が重要視され、現在では専門職の1つに取り上げられています。
多くの歯科医院では、トリートメントコーディネーターが在籍している所が年々増加傾向にあります。トリートメントコーディネーターは歯科医師と患者様の間に立ち、患者様にベストな治療計画を提案する役割を果たしています。
本日はこのトリートメントコーディネーターについてお話します。
目次
トリートメントコーディネーター(TC)って何?
トリートメントコーディネーターは歯科医師と患者様の双方にとって満足した治療を行うために調整を行う人材です。いわゆる歯科医師と患者様との真ん中に立って橋渡しをする役割を果たしています。
トリートメントコーディネーターは治療を始める前に、患者様の希望、疑問点などをしっかりとお聞きした上で患者様に治療を提案し、患者様の疑問点や不安に思っていることを解消させることを行っていきます。
また治療に関しては、技術的な治療法、使用していく材料についての詳細な説明を患者様に分かりやすく、丁寧に伝える役割を果たしています。
そのことによって患者様が安心して治療を受けていただけるように、また最適な治療を選択できるようにサポートしていきます。
トリートメントコーディネーターの業務

トリートメントコーディネーターの主な業務は患者様とのカウンセリングです。
カウンセリングは主に以下の3つがあります。
- 初診カウンセリング
- セカンドカウンセリング
- 補綴カウンセリング
初診カウンセリング
患者様が初診で来られた時に行うカウンセリングを初診カウンセリングと言います。
初診カウンセリングでは、
- 主訴
- 全身の健康状態
- 基礎疾患
- アレルギーの有無
をお聞きします。
セカンドカウンセリング
セカンドカウンセリングとは、レントゲン、口腔内写真などで、虫歯、歯周病の有無など患者様にしっかりと理解していただくカウンセリングです。
患者様の希望や疑問など、思っていることをしっかりとお聞きし、それを踏まえて治療計画を立案し、患者様に状況を説明します。その上で、治療に対するご理解と同意をいただいています。
多くの場合、患者様によっては、色々な治療法の選択肢があることがあります。その治療方法において、治療期間、治療にかかる費用、治療方法に対するメリット、デメリットをお話ししています。
トリートメントコーディネーターは中立的な立場で患者様にアドバイスして、患者様にとって最適な治療法を選択していただく手助けを行っています。
補綴カウンセリング
補綴カウンセリングとは、被せ物や入れ歯について、どのような物を使用するかというご相談のことです。
例えば、虫歯治療がある程度進行し、根管治療が終了して『次は被せ物の作製に入ります』という段階になった時、補綴カウンセリングを行います。補綴物には色々な種類(CADCAM冠・ジルコニア冠・セラミック冠)があります。
被せ物は、お口の中に装着することによって体の一部としてずっと機能するものです。虫歯や歯周病の再発リスク、審美的な要素、どのくらい被せ物が長持ちするか、治療費など補綴物によって異なります。被せ物のメリット・デメリットをしっかりと理解していただいた上で、患者様の希望に沿った被せ物を選んでいただきます。
歯科治療で患者様が自費治療を選択された場合は、治療費が高額になってきます。その場合、治療費にかかる総額をしっかりと説明し、お支払い方法の相談を受けます。患者様によっては分割払いを希望されることがあります。その場合は、デンタルローンなどでのお支払い方法についても説明し、患者様の経済的負担を軽減できるよう一緒になって考えていきます。
トリートメントコーディネーターの必要性

歯科医院にとって、トリートメントコーディネーターの役割はとても重要です。以前は歯科医院が治療法を一方的に決めることも多くありました。
しかし最近では、患者様の声にしっかりと耳を傾けてお聞きし、治療方法を決めることが増えてきています。これは、患者様に安心して歯科治療を受けていただくのに重要な役割を果たしていると考えています。患者様はどのような治療法で、どのように治療が進んでいくかしっかり理解した上で治療をしていく傾向にあるからです。
トリートメントコーディネーターがいることで、患者様が感じる不安や疑問点に正面から向き合い、治療を進めることで安心して治療を受けていただくことができ、患者様との信頼関係を築くことができます。
トリートメントコーディネーターに必要なこと
トリートメントコーディネーターにとって必要なことは、患者様との会話です。そのためにコミュニケーション能力、説明能力が大切になります。また、歯科治療の説明もしなければならない為、歯科医療の知識も必要です。
歯科治療におけるメリット・デメリットはもちろんのこと、患者様の質問に対しても適切に答え、分かり易く説明しなければなりません。
また、トリートメントコーディネーターは患者様の心に寄り添い、歯科医院とより良い信頼関係を築き上げるためのパートナーであるため人間性もとても重要な要素になります。
トリートメントコーディネーターと歯科衛生士との違い
歯科医院には様々な職種がありますが、歯科衛生士もトリートメントコーディネーターも歯科医師と患者様の間に立って治療計画の説明をします。
歯科衛生士は、国家試験を受けて合格した後、歯科衛生の資格を持たなければなりません。そして、治療において歯科医師と連携して、予防処置、ブラッシング指導、スケーリングなどを行います。そのため、実際に患者様のお口の中を触り、処置を行うことができます。
トリートメントコーディネーターは、直接、口の中を触って治療を行うことはありません。あくまでも患者様の希望を聞いて治療内容を説明することが主な業務になります。
トリートメントコーディネーターの資格
トリートメントコーディネーターの役割は、歯科医院においてとても重要な役割になっています。そのためトリートコーディネーターの育成を目的として独自の資格を取得する方法があります。
代表的なものが日本歯科TC協会です。この日本歯科TC協会の資格取得制度は、患者さんとのコミュニケーションの向上、歯科治療あるいは予防歯科の知識などをマスターすることを通じてトリートメントコーディネーターの育成ができます。
最近では歯科衛生士、歯科助手など多くの方が受講し資格を取得される方が増えています。トリートメントコーディネーターは高度なコミュニケーションが求められるので資格取得するのもいいかもしれません。
もちろん資格取得しなくても治療において経験や研修でスキルを磨いていき、トリートメントコーディネーターの役割を果たしている方も多くいらっしゃいますので、必ずしも資格が必要かと言えばそうではありません。
まとめ

トリートメントコーディネーターは、歯科医院にとって重要な職種になっていきています。特に矯正治療、インプラント治療、審美歯科などの高額な治療においては、患者様に治療内容、治療方法、治療の費用を丁寧に説明し、納得したうえで治療を行わなければなりません。
そのためには、トリートメントコーディネーターの存在は必要不可欠なものになっています。そして歯科医師と患者さんとの間で信頼関係を築き、治療を進めていくためにとても重要な役割だと考えています。
今後もトリートメントコーディネーターの育成に力を入れて患者さんに信頼される歯科医院を目指していきたいと思っています。