こんにちは。鳥取市東町にある歯医者「山根歯科医院」です。
歯周病は口の中だけの問題ではなく、他の病気との関連も指摘されています。健康の維持には、健康的な食事や運動だけでなく歯周病の予防も必要です。
歯周病の原因となるのは歯周病菌です。歯周病菌は人にうつるのか、どのような状況で感染するのか、気になる方も多いでしょう。
この記事では、歯周病菌の基礎知識と感染経路、歯周病の症状と全身への影響について解説します。歯周病を予防・改善したいと考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
歯周病菌とは
歯周病菌とは、歯周病の原因となる細菌の総称です。口内には多くの菌が住み着いており、その中で歯周病に関与している菌は数十種類かそれ以上とも言われています。
歯周病の発症・進行に深く関係する、代表的な菌は以下の3種類です。
- P.g菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)
- T.f菌(タンネレラ・フォーサイセンシス)
- T.d菌(トレポネーマ・デンティコーラ)
口内の細菌は、酸素があるところで増殖しやすい好気性菌と、酸素がないところで増殖しやすい嫌気性菌、酸素の量に関わらず増殖する菌に分けられます。歯周病の原因となる細菌は、嫌気性が多いのが特徴です。
歯周病菌は酸素が届きにくい場所を求めて、歯周ポケットに入ります。より酸素が少ない奥へ奥へと入り込んでいくため、歯周ポケットは徐々に深くなっていきます。
4mm以上の歯周ポケットは、酸素を嫌う嫌気性菌にとって活動しやすい環境です。4mm以上になると歯周病菌はより活発に活動するようになり、歯周病の進行が加速していきます。
歯周病菌は人にうつる?
歯周病菌は、唾液を通じて人にうつります。日常生活での具体的な行動は、以下の通りです。
- 会話
- 箸やスプーン・フォークの共有
- 歯ブラシの共有
- キス
- 食べ物の口移し
ただし、歯周病菌がうつったからといって、必ず歯周病を発症するわけではありません。口内を衛生的に保っている方は、歯周病菌が増殖しないためです。
しかし、周囲に菌を広めないためにも、歯周病の方は行動に注意する必要があるでしょう。
歯周病菌がもたらす歯周病の症状
歯周病は、歯茎(歯肉)や歯を支える骨(歯槽骨)が徐々に破壊されていく病気です。進行が遅く痛みもないため、多くの方は初期段階で自分が歯周病だと気が付きません。ある程度進行して、明らかな症状が出てから気がつくケースが多いです。
ここでは、症状を初期段階・軽度・中度・重度に分けて紹介します。当てはまる症状がある方は、歯科医院に相談しましょう。
歯周病の初期段階の症状
歯周病の初期段階は、歯肉炎と呼ばれます。十分に歯磨きができていないと口内に細菌の塊である歯垢が溜まります。歯茎にのみ炎症が起こっている状態が歯肉炎です。
歯肉炎の主な症状は以下のとおりです。
- 歯磨きをすると出血する
- 歯茎が腫れている
- 歯茎の色が赤い
歯を磨く際には、出血の有無と歯肉の色や膨らみをチェックしましょう。健康な状態なら歯茎は薄いピンク色をしており、ブラッシングしても出血しません。
また、起床時に口内がネバネバしていると感じたら、歯周病菌が繁殖している可能性が高いです。
健康な方の歯周ポケットの深さは1~2mmですが、初期段階の歯肉炎になると炎症の影響で2~3mmになります。
軽度の歯周病の症状
軽度の歯周病は、歯肉の炎症が悪化し歯周病菌が歯周組織に侵入している状態です。歯を支えている歯槽骨や、歯の根本と歯槽骨を結びつけている歯根膜の破壊が進行し始めます。歯周ポケットの深さは、3~5mmになります。
初期段階からの症状である歯肉の出血や膨らみに加えて、軽度歯周病では口臭が強くなるケースがあります。
中度の歯周病の症状
中度の歯周病では更に症状が進み、歯周ポケットの深さは4~7mmになります。鏡で見ると、歯肉が下がった影響で以前よりも歯が長くなったと感じるでしょう。歯槽骨や歯根膜の破壊が進み、歯がぐらつき始めることもあります。
歯肉からの出血に加えて膿が出る場合もあり、より口臭が目立つようになります。歯肉の腫れにより、歯が浮くような感覚や痛みが生じるケースもあります。
重度の歯周病の症状
重度の歯周病は、歯槽骨や歯根膜が半分以上破壊された状態です。歯周ポケットの深さは6mm以上となり、歯間が広がります。歯のグラつきにより、食べ物を噛んだときに痛みを感じるようになるでしょう。
重度になると、抜歯を避けられないケースもあります。歯を残す治療が優先されますが、周囲の歯への感染拡大防止、痛み・不快感の解消のためには、抜歯が有効な手段となります。
抜歯した箇所には、入れ歯やインプラント、ブリッジなどの治療をほどこさなければなりません。そのままにしておくと咀嚼しにくくなるだけではなく、全身のバランスが崩れる、認知症のリスクが上がるなど、全身に悪影響が及びます。
歯周病が全身に及ぼす影響
歯周病が全身に及ぼす影響は、以下のとおりです。
- 糖尿病の発症・進行
- 脳梗塞や心筋梗塞
- 早産や低体重児出産
- 誤嚥性肺炎
それぞれを詳しく解説していきます。
糖尿病の発症・進行
歯周病と糖尿病には相互関係があります。糖尿病による免疫機能の低下や唾液の分泌量の低下などにより、歯周病にかかりやすくなります。
また、歯周病は、糖尿病の発症や進行に影響を及ぼします。糖尿病の発症や進行を防ぐには、血糖値を適切な範囲に保つ必要があります。
しかし、体内に入った歯周病菌に対して身体が放出する物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを弱めます。そのため、血糖値コントロールが困難になるのです。
歯周病の改善により糖尿病が改善に向かうケースも確認されています。
脳梗塞や心筋梗塞
歯周病は動脈硬化の原因となり、脳梗塞や心筋梗塞が起きるリスクを高めます。動脈硬化とは、血管の内壁が厚くなることで血液の通り道が細くなったり、血管の弾力性が失われることです。
歯周病菌が放出する毒素の影響で、血管の内側には塊ができます。この塊が破裂して形成される血栓(血の塊)が血管に詰まると、重大な健康問題を引き起こします。
脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞となり命にも関わるでしょう。
早産や低体重児出産
妊娠している方が歯周病になると、早産や低体重児出産のリスクが高まります。歯周病菌の毒素に対抗するための炎症物質は、胎児の成長に影響を及ぼすほか、子宮の収縮、胎盤の早期剥離を誘発するのです。
一方で、妊娠中は歯周病になりやすい条件が揃っているので注意が必要です。妊娠期に分泌が増える女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンは、歯周病菌の一種であるプレボテラ・インターメディアという細菌の餌になります。
また、つわりの影響で十分に歯磨きをできないことも歯周病のリスクを高める要因でしょう。妊娠中の歯周病を予防するためには、体調が安定している時期に歯科医院で口腔ケアや必要な治療を受けることが重要です。
誤嚥性肺炎
歯周病は、誤嚥性肺炎の原因となります。誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液の中に混じっている歯周病菌が気管を通じて肺に入って起きる病気です。
通常、食べ物や唾液が気管に入らないための嚥下反射や咳反射という仕組みが働いて誤嚥を防いでいます。
しかし、高齢になると機能が衰え、食べ物や唾液が気管にはいる誤嚥を起こしやすくなります。脳卒中を起こした方、認知症の方、身体の抵抗力が下がっている手術後の方は、とくに注意が必要です。
専門家による定期的な口腔ケアや、嚥下リハビリを行うと良いでしょう。
まとめ
歯周病菌とは、歯周病の原因となる細菌の総称です。口の中には多くの種類の菌がおり、互いに影響し合いながらバランスを保っていますが、口腔ケアが十分でないと歯周病菌が繁殖します。
初期段階では症状が少ないので、自分が歯周病であることに気が付かない方も多いです。気がついたときには軽度・中度まで進行している場合もあります。歯周病菌は人にうつるので、早めに気づけるよう常に自分の口内の状態をチェックするべきでしょう。
歯周病菌は、歯と歯肉の間にできる歯周ポケットから身体の内部に侵入し、身体にさまざまな影響を与えます。毎日の歯磨きだけでなく、定期的に専門家に口腔ケアをしてもらいましょう。
歯周病治療を検討されている方は、鳥取市東町にある歯医者「山根歯科医院」にお気軽にご相談ください。
当院は、痛みに配慮した優しい治療を心がけて診療を行っています。むし歯・歯周病治療だけでなく、矯正治療や小児歯科、インプラント治療など、幅広い診療に力を入れています。