最近、子どもさんの歯科治療や虫歯の予防方法についてのお問い合わせがあります。小児歯科では、成長期の口腔内において、長期にわたり健康を維持していくことを念頭に置き、適切な治療法や、予防による指導を行っていく必要があります。本日は、小児歯科として、子どもへの治療法や指導についてお話します。
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目次
虫歯治療
虫歯の治療においては、大人の治療法とほとんど変わりありません。そして、虫歯の進行度によって、治療方法が異なってきます。
初期虫歯(Co~C₁)
初期の虫歯の場合は、歯の表面にフッ素塗布を行うことが多いかと思います。フッ素は、歯の再石灰化を促進すると同時に歯質強化の働きがあります。このことにより、虫歯の進行を防ぐことができます。
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進行した虫歯(C₂)
初期の虫歯の場合は、フッ素塗布を行うことが多いですが、ある程度、虫歯が進行した場合は虫歯の部分を除去してレジン(プラスチック)で充填する必要があります。
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虫歯が歯髄まで到達した場合(C₃)
虫歯が神経まで進行している場合、抜髄(歯髄処置)を行う必要があります。C₂以上になると、フッ素塗布では治療が困難になります。
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さらに虫歯が進行した場合(C₄)
さらに乳歯の虫歯が進行して、歯髄が壊疽を起こしているケースは、永久歯と同様に抜歯するケースがあります。ただ、乳歯の抜歯はできるだけ避けなければなりません。
乳歯はいつか永久歯に生え変わるので軽い気持ちで考えている保護者の方もいらっしゃいます。しかし、乳歯を早期に喪失すると、後に生えてくる永久歯に悪影響を及ぼすことがあります。
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乳歯を早期に喪失するとで永久歯に及ぼす悪影響
乳歯を早期に喪失すると、歯並びが悪くなります。これは隣在歯が傾斜して、後に生えてくる永久歯が正しい位置に生えてこない可能性があるためです。
また、歯を失うことで、よく噛んで食べることが困難になっていくため顎の発達にも影響してきます。そのため、乳歯を早期に喪失することはできるだけ避けなければなりません。
当院では早期に乳歯を失った場合は、保隙装置を装着することをおすすめしています。保隙装置とは、歯の隙間を保つ装置で、代表的な保隙装置として、『バンドループ』や『リンガルアーチ』などがあります。
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このような保隙装置を装着することにより、抜いた歯の隣の歯が傾斜するのを防ぐようにし、後に生えてくる永久歯が正常な位置に生えてくるようにしています。
予防処置
フッ素塗布
虫歯の予防には『フッ素が効果がある』とよく耳にすることがあると思います。フッ素には再石灰化を促進すると同様に、歯質を強化する効果があります。
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特に子供の歯においては、乳歯は永久歯よりもエナメル質が薄く、虫歯になりやすいです。また、永久歯の生え始めは幼若永久歯と言い、虫歯になるリスクが高い状態にあります。そこにフッ素塗布を行うことで、歯質の強化を図り、虫歯予防に大変効果を期待できます。
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よくフッ素塗布は子供に行うイメージがあります。子供に比べて大人の場合は効果が弱いと言われていますが、全く効果がないわけではありません。
シーラント
シーラントは小児の虫歯予防処置として、フッ素塗布と並んでよく行われています。シーラントは奥歯の溝をプラスチックの樹脂で埋める予防処置です。
虫歯の好発部位は歯の咬合面の溝です。この溝は歯ブラシの毛先が届きにくいので、虫歯になりやすいです。そこで、咬合面の溝にプラスチックのようなものを溝に埋めることにより、虫歯になりにくします。
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歯列不正や噛み合わせの治療
矯正治療
小児の矯正治療には、第一期治療と第二期治療に分かれています。
第一期治療では、乳歯のみまたは乳歯と永久歯が混在している時期に行われる治療です。大体、3~12歳頃の治療です。
第一期治療は、顎の成長をコントロールし、正しい歯並びを促すことを目的といています。主に床矯正が行われ、取り外し式の装置が使用されることが多いです。
第二期治療では、歯の表面にブラケットを装着したワイヤー矯正が使用されます。第二期治療では、大人の矯正と考えてもよいと思います。
歯並びの状態によって、第一期治療から行うか、第二期治療から行うか変化していきます。歯並びが悪くなりそうな子供の場合は、早めに歯科医師に相談されることをおすすめします。
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習癖の改善
指しゃぶりや舌癖などが原因で歯並びや噛み合わせが悪くなることがあります。指しゃぶりや舌癖がある子供はその習慣を直すトレーニングをする必要があります。
指しゃぶりをやめさせる方法
指しゃぶりは3歳頃までは、歯並びに影響を及ぼすことはほとんどありません。ですので、3歳頃までは無理に辞めさせる必要はないと思います。
しかし、4歳以降も指しゃぶりをしている場合は歯並びに影響を及ぼす可能性がある為、辞めさせなければいけません。
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ただ、辞めさせるといっても、きつく叱ったりすることはやめましょう。子供に根気よく「指しゃぶりするとダメだよ」と言い聞かせをしなければなりません。おもちゃを使って遊んだり、本を読んであげたりして、気をそらして指しゃぶりをやめさせることも一つの方法です。
舌癖をやめさせる方法
舌癖をやめさせるためには子供に舌の正しい位置や嚥下方法を教え習慣化させるようにします。また、舌癖がどうしてもやめられない場合は、歯科医院でMFT(口腔筋機能療法)を受けることをおすすめします。
MFT(口腔筋機能療法)とは歯の周囲にある口腔周囲筋の機能を改善する訓練法です。このMFTによって舌癖が改善されることが多いです。また、舌癖のほかに、口呼吸が改善することもあります。
外復治療
子供が転倒した際に歯を損傷し、歯が欠けたり、脱臼することがあります。その場合は早急に歯科医院を受診するようにしてください。
注意すべきこと
子供に対しての心理的配慮
子供は歯科治療に対して、恐怖心を抱いていることが多いです。特に初めて歯医者さんに連れていかれると何をされるのか不安になってしまいます。
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当院では子供の歯科治療を行うときは、痛みを最小限にすることを心掛けています。特に局所麻酔を行うときは注意が必要です。ゆっくりと丁寧に行うことが大切です。
怖がる子供に対しては、無理やり治療するのではなく優しく声をかけてあげ、できるだけリラックスさせて治療を行う必要があります。また、治療を行った後は褒めてあげることも大切だと考えています。
保護者の方の協力
保護者の方に協力していただきたいのが、歯磨き習慣です。子供が8歳になるまでは、親が仕上げ磨きをすることが大切です。歯磨きを嫌がる子供には、歯磨きの大切さを言い聞かせてあげたり、家族で一緒に歯磨きをする習慣を身に着けるのもよいのではないでしょうか。
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また、歯磨き習慣と同時に食生活の改善も重要です。糖分の過剰摂取を避け、間食の回数を減らすことはとても大切です。食後は歯を磨く習慣を身に着けるようにしましょう。
定期健診
当院では3~4カ月に1回の定期健診をおすすめしています。虫歯や歯周病などの予防はとても大切です。また、定期健診をすることによって、問題が見つかっても、早期発見・早期治療が可能になります。
「乳歯はいずれ永久歯に生え変わるから」と考えずに、乳歯も永久歯と同様に健康を維持することが大切です。
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まとめ
小児歯科は、虫歯を治すだけではありません。子供が長期に渡り、口の中の健康を維持するための土台作りだと考えています。
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歯科医と親子で協力して適切な口腔ケアを行うことが一番大切なことだと考えています。そして、家族全員でいつまでも口の中の健康が維持できることを考えていきたいと思っています。