目次
思春期とは
思春期とは、学童期の次に続く段階と考えられています。しかし、思春期の始まりは、第二次性徴の発現という身体的特徴によって表されているため年齢で区切ることは難しく、学童期の後半2年と重なっている場合が多いです。
思春期は身体面・精神面ともに個体差が大きく、近年では身体面の成長は早く始まり、精神面の成熟は遅く終わる傾向にあるようです。
このため、精神面の成熟が身体面の著しい発達に伴わず、心理的には不安定な時期となるのが特徴です。
思春期の健康教育
思春期は、健康に関する知識を十分持ち合わせていても、実際に行動に変化を起こすことは難しいです。また、『だめ』と一方的に決めつけられたり、押しつけられることを嫌う傾向にあります。
健康教育とは「健康によい行動が自発的にとれるように、計画的にあらゆる学習機会を組み合わせること」です。健康教育を行う際には、ただ単に知識を提供するだけでなく、実際の生活の中の問題点に自分自身が気づけるような主体的な学習方法を提供します。
生活習慣を整えるために、現在行っていることを変える必要がある場合は、行動変容の方法をただ単に教示するのではなく、話し合ったり、一緒に考えることが重要です。
生活習慣病予防
思春期は、生涯にわたる生活習慣を形成する上で重要な時期です。さまざまな生活習慣のなかでもとくに、飲酒・喫煙などは発達途上にある心身に悪影響をもたらすものを避けるように援助します。
また、運動に対して消極的なライフスタイルなどの望ましくない生活習慣に陥らないような援助が必要となります。
栄養・食生活
間食を含めて食品や栄養素に関する知識と正しい選択方法を教える事が大切です。具体的にはタンパク質・ミネラル・鉄などの思春期の身体づくりに必要な栄養素を含む食品についてと、生活習慣病予防のために、塩分の多い食品、スナック菓子や清涼飲料水に含まれる糖分についてなどを伝える事です。
社会性の発達
精神的な自我に目覚める思春期は、自分を認めてもらいたいという強い欲求をもちます。しかし、自分が求めているほど認められなかったり、自分が思うように認めてもらえず圧迫が加えられると、その圧迫をはねかえそうとする傾向が強まるのです。
親との関係
この時期は、これまで絶対的な権威であった親に対して批判的になり、反抗や反発がみられます。親の理解不足や権威の押しつけがあると、それを千渉やプライバシーの侵害と感じ、関係は悪化することもあります。
また、このような子どもの態度は親に苛立ちを感じさせ、親の子離れを促したり、子どもはこれまで依存していた親から精神的に離れることによって、孤独感を感じるようになります。
友人関係
思春期の友人とのあり方は人格形成として重要な位置を占めます。親密な友人関係をもつことは自分自身と向き合い、価値観や自己像を作り上げるための重要な助けとなります。
そのため親密な友人関係がもてない場合は、反社会的な行動をとってしまうこともあるのです。
思春期には、遊びを媒介とした友人から、内面的で人間的な結合が求められる心の友や親友など親密な1対1の友人関係が重要となります。
異性との関係
異性への関心や興味がわきおこり、具体的な行動へと変化します。学童期のように同性ばかりの集団ではなく、異性を交えたグループや、異性との親密な関係を求めるようになります。
生活の特徴
生活習慣病の原因となる生活の特徴は、学童期に引き続き思春期でもおきており、その様態は思春期早期より思春期後期になるにしたがって悪化する傾向にあります。
運動不足
「令和4年度全国体力・運動能力・運動習慣等調査」によると、小学校から中学校の進学に伴い運動時間が増加または減少の二極化しています。
運動する場所や設備、スポーツを教える人材やスケジュールなどは、小学校・中学校・高校などの学校を中心とした地域社会の物理的環境の影響も大きいようです。
睡眠不足
睡眠はライフスタイルの基盤ですが、思春期・青年期では学童期よりもさらに平均睡眠時間が短くなります。
睡眠不足を感じている中学生に共通の理由の1位は「宿題や勉強で寝る時間が遅い」で、続いて「なんとなく夜更かしをしてしまう」と「テレビやDVD,ネット動画などを見ている」でした。
このように、睡眠不足には携帯電話・スマートフォンの普及と利用時間の長さや運動不足などのライフスタイルが関係しています。
ストレス
この時期のストレスは、学業・親や異性を含めた友人との人間関係の2つに集中し、それぞれが関係し合っています。また、これらのストレスによって思春期の子どもには身体症状としてストレス反応が発現しています。
「疲れた」「だるい」「眠い」という訴えをする子どもが増加しており、高学年ほどその率が高くなっています。
小学校高学年から症状が増えてくる原因として、思春期では、内分泌系や自律神経系のはたらきが不均衡になることが考えられます。
その他にも、学校に行きたくないといった学校に関するストレスや、家庭・学校における孤独感・不安感が年齢とともに増加することが考えられます。
他者との交流
近年、思春期の子どもが、コミュニケーションをとれないことや、自分の考えや気持ちを表現できないこと、人間関係が結べないことが問題となっています。
他者とのコミュニケーションの問題は、安定し、信頼できる関係が十分に育っていません。また、学童期までに異年齢・同年齢の友人と十分に遊び、そのなかで自己表現することが少なかったことが原因として指摘されています。
学童期に友人との付き合いが少ないと、その中で生じる葛藤に対処し、修復する体験が少ないままに成長してしまいます。友人同士の関係も表面的で、ちょっとしたことでも傷ついたり傷つけたりすることをおそれ、その場が楽しければよいという価値観となります。
そのため、現代の子どもは、正面から向かい合って、互いの意見や考えを述べたり、否定したり、それをまた修復したりということができず、携帯電話・電子メール・SNSなどによって葛藤を避け、表面的でその場限りの会話を楽しむ傾向にあります。
思春期の口腔ケア
思春期性歯肉炎
思春期性歯肉炎は主に小学校高学年〜中学生(10〜15歳頃)に見られる歯肉炎です。 思春期はホルモンバランスの乱れや生活の変化により、歯茎の腫れや出血などの歯肉炎が起こりやすい時期でもあります。 歯磨きの時に歯茎もチェックするようにしましょう。
症状
⚫︎歯茎が赤くなっている、ぶよぶよしている
⚫︎歯茎が痛む
⚫︎歯磨きをすると出血する
健康な歯茎
◎うすいピンク色
◎形は歯間にしっかりと入り込んで弾力があり引き締まっている
歯肉炎(歯茎のみに炎症が起きた場合)
歯と歯茎の境目に歯垢が付着すると、歯垢中の細菌が出す毒素により歯茎に炎症が起き、歯茎が赤く腫れてきます。
そのために軽度の歯肉炎になると歯周ポケットと呼ばれる溝ができ、歯垢がますます溜まりやすくなります。
虫歯の増加期
思春期は歯茎のトラブルと並び、虫歯になりやすい時期でもあります。 外出時の飲食や、間食の増加など、虫歯に対するリスクが高くなってしまいます。
虫歯の原因となっている歯垢をしっかり取り除く事が大切です。
セルフケアのポイント
◎歯と歯の間・歯と歯茎の境目 歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に当てて振動させて磨きます。
◎奥歯の噛み合わせ 噛み合わせ面に歯ブラシの毛先を直角に当て、細かく前後に動かして磨きます。
◎奥歯の後ろ側 歯ブラシの毛先を奥歯の後ろ側に当て、細かく前後・左右に磨きます。 歯ブラシが届きにくい歯の間は、デンタルフロスや歯間ブラシを使いましょう。
まとめ
思春期は、大人のように考えるようになりますが、内面的な成長に見合った行動がとれるようになるには時間が必要です。
親が子どもの成長・発達過程を理解し、自分自身の考えや生活をふり返り、各段階に見合った関わりができるように援助する事が大切だと思います。
思春期はお子様の将来の歯の健康を左右する大事な時期です。成長期を見守りながら声掛けをしていただき、歯磨きの習慣化、生活習慣の見直しをしていきましょう。