加齢によって、いろいろな臓器も変化が見られるように、口腔内も大きく変化します。
今日は、そのさまざまな変化の原因と予防方法をお話します。
①歯肉退縮
歯を支えている骨(歯槽骨)が吸収し歯肉が退縮し歯の根が露出してきます。最初は冷たい物がしみる軽度な症状ですが、それを放置しておくと、根面う蝕や歯周病が進行してしまい、歯を失ってしまうことがあります。
原因としては上手に歯磨きが出来てないことや、歯ぎしり食いしばりをすることによって起こる骨吸収が原因であることが多いです。
②唾液の分泌の減少(ドライマウス)
唾液の分泌量が減少し虫歯や歯周病の原因となってしまいます。唾液には、自浄作用・抗菌作用などがあり、口腔内の免疫機能を維持する役割を果たしています。
➂味覚障害
唾液の分泌量の減少にともない舌の表面が汚れてしまい味覚障害を起こしてしまいます。
➃顎が外れやすくなる
顎関節が摩耗し顎が外れやすくなります。
口の開け閉めが、しづらくなることがあります。
➄唇の萎縮
唇が萎縮して張りがなくなってきます。また、唇が乾燥して口角炎を引き起こすこともあります。
⑥歯牙の見た目
歯の色が黄色っぽくなったり、咬耗などによって歯がすり減ってきます。
これらのようなことが、加齢とともに変化し、それによってさまざまなトラブルが起こってきます。
では、どのようにして予防していけば良いのでしょうか。
加齢にともなって起こる口腔内の変化の予防には、まず口腔ケアが重要だと考えています。
歯ブラシの使い方
歯ブラシの使い方(ブラッシング法)は、定期的に歯医者さんに通って、正しい歯磨き方法を身につけて行く必要があります。また、歯ブラシのサイズも自分に合ったものを使用してください。歯と歯の間、入れ歯の留め金部分などは、汚れがつきやすく、通常のブラッシングでは、磨き残しが多いので、デンタルフロスや歯間ブラシなどの使用をお勧めします。
また、手で歯磨きが難しい場合は、電動歯ブラシを使用することも良いと思います。電動歯ブラシは歯肉のマッサージ効果もありますので、特に高齢者の方には有効だと思います。
また、歯磨き粉においては、フッ素配合の物がお勧めです。特に認知症の高齢者は、チョコレートやジュースなど甘い物を好む傾向があります。フッ素は、虫歯や知覚過敏などに効果があります。舌が汚れているときは、舌ブラシの使用もお勧めです。
ドライマウスを予防
よく嚙んで食事をしたり、こまめに水分補給、唾液腺マッサージも有効です。また、保湿剤が配合された洗口液(デンタルリンス)の使用も良いと思います。
入れ歯の取り扱い
入れ歯は、清潔にしておきましょう。
汚れが付着したまま使用していると、虫歯や歯周病だけでなく、舌が汚れ、発音障害・味覚障害が起きたり、入れ歯自体も変形し、合いが悪くなってしまいます。入れ歯専用ブラシで汚れを落とし清潔な状態にしておきましょう。入れ歯洗浄剤の使用をお勧めします。
当院では、訪問診療を行っていますが、その際なかなか口が開けられない高齢患者さんがいらしゃいます。
このような時、「これでは口腔ケアができないなあ…」と感じますが、無理矢理口を開けさせるのではなく、どうして口を開けてくれないのか原因を考えるようにしています。
顎関節症などで機能面で開けられない場合は、口腔外科で相談することになりますが、心理的に口が開けられない場合は、笑顔で優しい言葉で接し緊張をほぐすようにしています。患者さんとの信頼関係が得られるようになり、心を開いて下さるようになってから口腔ケアを行うようにしています。
加齢による口腔内の変化とトラブルの予防方法や、その他気になることがございましたらお気軽にご相談ください。